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東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)78号 判決 1980年11月17日

原告 神山武広 ほか六名

被告 林野庁長官 ほか一名

代理人 水野秋一 ほか一二名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事  実<省略>

理由

一  請求の原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件各処分が違法であるか否かについて判断する。

1  本件各処分に至る経緯等

被告の主張1及び2の(一)ないし(四)の事実並びに2の(五)の事実のうち、川内分会が六月一二日付処分の後さらに同処分の撤回等の要求を掲げて闘争を行つたこと、被告らの主張4の理由に基づいて本件各処分がされたことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  本件争議行為の経過

(一)  六月一二日工藤事業課長に対する確認書作成の強要

<証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

工藤事業課長は、右同日、昭和三四年度直営生産事業の単金協定のための現地調査(山見)を行つた後、午後四時ごろ野平事業所に立ち寄つたが、その際各事業所班長及び副班長らのほか作業員ら約六〇名が、営林署本署において当日の結果報告及び翌日の計画樹立等の職務を有していた同課長を取り囲んで右事業所内に軟禁してその帰署を妨げ、造林賃金問題等について同課長を詰問し、また罵言雑言を浴びせるなどして作業員の宿舎新築問題について確認書の作成を強要し、さらに班委員会の要求事項の扱いに関する同課長の指示等に関して確認書の作成を強要していたところ、午後八時半ころから、原告大沢実、同大沢敬作及び同板井の三名がこれに加わり、右原告らが主体となつてさらに午後九時半ころまで同課長に脅迫を加えるなどして右確認書の作成を強要し、ついに原告大沢実が自ら同課長名義の確認書を書き、疲労の極に達した同課長をしてこれに拇印を押させるに至つた。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(二)  六月一三日事業用電話取次ぎ拒否

<証拠略>によれば、次の事実が認められる。

本件争議行為当時川内営林署に設置されていた事業用電話は、営林署本署から、畑連絡所を中継地点として、野平、田ノ沢方面の各事業所を連絡する唯一の通信機関であり、営林署本署と奥部各事業所との間で通信を行うためには、畑連絡所における交換連絡(取次ぎ)が必要であつた。そして、畑連絡所には電話交換手として鈴木ひさが配置されていたが、右同日原告工藤は鈴木に対し、午前中事業用電話の取次ぎを行わないように指示し、この指示に従つて鈴木が電話の取次ぎ業務を行わなかつたため、同日午前中営林署本署と奥部事業所の連絡が途絶した。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(三)  六月一五日雇用予定者に対する辞令書交付の妨害

<証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

川内営林署庶務課長久保田善元は、六月一三日、昭和三四年度直営生産事業実行のため定期作業員として任用を予定していた二二名の者に対し、同月一五日からの任用が可能であること、当局がかねて川内分会に対して表明していたところに従い給与の支払形態は出来高給制とすること、これらについて同意する場合には、六月一五日辞令書を交付して任用を行うので同日営林署に参集されたい旨を告知した。そして六月一五日には、営林署本署において、右二二名の者及びこれに同行した原告納谷、三上清明川内分会執行委員、小林健蔵青森地本執行委員と、畠山署長及び久保田庶務課長との間で、給与の支払形態をめぐり応酬がされたが、三上は、当局が交付しようとしていた「出来高給制」と記載された辞令書を受領するもやむをえないとの判断に達し、右二二名の者もこれを了承するに至つた。しかし、畠山署長及び久保田庶務課長が交付すべき辞令書を準備している間に、原告納谷は、右二二名の者に対し、「辞令は形式的なもので受取る必要はない。」などと申し向け、辞令書を受領せずに上山し勤務を開始するようそそのかしたため、これらの者は、辞令書受領の決意を翻し、全員上山準備のため営林署を退出してしまつた。畠山署長は、かねてから給与支払形態をめぐる川内分会との紛争の経緯に照らし、この点についての被任用者の同意が明確でない以上、辞令書を交付しなければ任用が不可能となるので、川内営林署庶務課労務厚生係長寺田定雄らに命じ、新田中継所において右二二名の者を説得し、辞令書を交付しようとしたが、これらの者はここでもその受領を拒否したため、結局右二二名の者に対する辞令書交付は不可能に終り(同日これらの者に対する辞令書交付が不可能に終つたことは、当事者間に争いがない。)、同日の任用ができないこととなつた。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(四)  闘争委員会における闘争の企画推進

六月二〇日組合事務所において闘争委員会が開催されたこと、その後も随時闘争委員会が開催されたことは、当事者間に争いがなく、この事実に<証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

六月二〇日開催された闘争委員会には、原告神山は書記長として、同工藤は副委員長として、その余の原告らはいずれも闘争委員として参加し(闘争委員会における各原告らの役職は、前示のとおり、当事者間に争いがない。)、当局の姿勢の分析を行うとともにこれに対する組合員らの意向、川内分会のとるべき態度等について討議し、組合員の家族も闘争に参加させること、六月二一日総決起大会を開催すること、同月二二日から営林署本署庁舎内においてすわり込みを行うこと、右すわり込み実施の具体的方法等今後川内分会の行うべき闘争の方針、行動内容を討議決定した。また、原告らはその後も本件争議行為の行われた期間中、闘争本部(後記認定参照)や組合事務所において、頻繁に闘争委員会を開催し、情勢の分析を行うとともに具体的な行動内容について討議決定した。

<証拠略>中には、原告板井は病気のため闘争委員会には参加していない旨の供述部分があるけれども、<証拠略>によつても、その病名、病状、治療内容等について明確を欠くもので、当時同原告が真実病気に罹患していたのかどうか、仮に医者の診断を受けた事実があつたとしても、その健康状態が平常の勤務ないし組合活動に支障を及ぼす程度のものであつたのかどうか極めて疑わしいし、他にこの点を裏付けるに足る客観的資料は何もなく、加えて、後記認定のとおり、同原告が六月二二日すわり込みの準備作業として営林署構内における幕舎設営に参加し、その際山口経理課長に対する抗議にも加わつていること、<証拠略>によれば、同原告は、六月二三日及び二五日には、闘争本部(後記認定参照)において他の闘争委員と行動を共にし、労働歌の合唱などを行つていることが認められ、これらの事実に照らせば、前示供述部分は措信できない。

また、<証拠略>中には、六月二二日から実施された庁舎内すわり込みは、同月二〇日中央本部からの指令に基づくものであり、その後行われた行動も中央本部の指示に基づくものであつて、闘争委員会においては、これら中央指令・指示を確認伝達したにすぎない旨の供述部分がある。

しかしながら、右各供述は、六月二〇日伝達されたという中央指令の具体的内容、その伝達経路等について相互に矛盾し、明確を欠くうえ、右は極めて重大な内容の指令であると考えられるにもかかわらず、単に電話により伝達されたというにとどまり、指令発出の有無、その内容を明確に確認するに足る資料が何もないなど不自然といわねばならないし、<証拠略>によれば、当時全林野中央本部は、長期的姿勢で日給制闘争を行うこととし、いわゆる一発主義的な闘いには否定的な考え方を採つており、川内分会等で行われた後記認定のようなすわり込み戦術は、中央本部の方針に反していたことが認められ、これらの事実及び後記認定の本件争議行為収拾の経緯に照らせば、前示の庁舎内すわり込み等の行動が中央本部の指令ないし指示に基づくものであるとの各供述部分は、いずれも措信できない。

(五)  六月二一日総決起大会等

<証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

右同日川内分会では、組合員及びその家族らが多数参集し、川内町公民館において総決起大会が開催され(同日総決起大会が開催されたことは、当事者間に争いがない。)、原告神山が、六月二二日から庁舎内すわり込みを行うとの前示闘争委員会の決定を全組合員に伝達し、右決定及びその具体的実施方法が確認された。次いで、安保条約改訂阻止、出来高制反対、定期作業員二二名の雇用、造林賃金引上げ等の要求事項を掲げ、実力行動に入るとの「斗争宣言」が決議、採択された。総決起大会終了後、これに引き続いて、原告神山、同工藤、同大沢栄一、同大沢実らが、右大会に参加した組合員らの先頭に立つてこれを指揮し、「賃下げ、首切り反対」、「日給制を守れ」、「安保改訂反対」などと記載した多数のプラカードを掲げて川内町内のデモ行進を行つた。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(六)  六月二二日の行為

(1) <証拠略>を総合すると、次の事実が認められる。

右同日午前八時二〇分ころ、小林地本委員、津田光一川内分会執行委員らに指揮された作業員約三〇名が、前示庁舎内すわり込みの決定を実行するための準備作業として、営林署本署庁舎事務室内において、同所にあつた机及び椅子を壁際に積み上げて部屋中央部にすわり込みのための空間を作り、また構内庁舎正面玄関前において、玄関両脇に二張りの天幕舎を設営した。その際畠山署長の指示を受けた山口経理課長及び寺田労務厚生係長が現場に赴き、右準備作業を指揮していた小林地本委員に対し、作業の即時中止と原状回復を申し入れたが、同人はこれに従わないのみならず、原告板井を含む右作業員らとともに山口課長らを取り囲んで「ばかやろう」などと罵声を浴びせるなど反抗的態度を示したため、同課長らは説得を断念し、営林署から退出した。そして、右準備作業終了後、約二〇〇名の組合員及びその家族らが、庁舎内事務室に入り、同所にむしろを敷いてすわり込みを開始し、同室内には、「実力行使」、「必勝」、「処分撤回」などと記載した多数のビラが張り出された。また庁舎外においては、国旗掲揚台に組合旗が掲げられ、前示天幕舎のうち庁舎玄関に向つて右側の幕舎(以下「家族幕舎」という。)には、組合員及びその家族ら約一〇〇名がすわり込み、同じく向つて左側の幕舎は闘争本部とし、同所には「全林野」などと染め抜いた腕章を着用した闘争委員が常駐し、これらの者がすわり込み等の指揮にあたつた。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(2) <証拠略>を総合すると次の事実が認められる。

前示のとおりすわり込みが開始されたのに対し、畠山署長ら管理者は、同日二時半ころすわり込みの現場に赴き、川内分会執行委員長である原告工藤に対し、「職場復帰について警告」(三四年川労第四七号)を発し、職場を放棄しすわり込みに参加している組合員らを解散させ、職場に復帰させるよう求めるとともに、庁舎内外にすわり込んでいる組合員らに対し、職場復帰の業務命令及び営林署本署勤務者以外の者についての庁舎内からの退去要求を口頭で伝達したが(同日畠山署長が業務命令等を発出したことは、当事者間に争いがない。)、組合員らは右命令等を無視し、すわり込みを続けた。のみならず、畠山署長の命令により、坂上経営課長が業務命令書を庁舎内応接室扉外側に張り出そうとした際、原告神山は右命令書を剥ぎ取り、これを廃棄しようとしたので、同課長が奪い返したところ、同原告ほか数十名の組合員らが同課長を取り囲み、同原告が中心となつて罵声を浴びせた。また、同じく畠山署長の命令により、土岐事業課長が庁舎外においてすわり込みを行つている組合員らに対し業務命令を周知させるため、庁舎玄関入口付近に業務命令書を張り出したところ、原告工藤ほか組合員ら二〇名の者が、約一〇分間にわたり同課長を取り囲んで壁に押しつけながら「業務命令書を取りはずせ。」、「取りはずさなければ佐井へ帰さないぞ。」などと申し向けて脅迫を加えた。

(3) 被告の主張3(六)(4)の事実は、当事者間に争いがない。

(4) <証拠略>によれば、次の事実が認められる。

同日午前一一時すぎ、原告工藤、同大沢栄一、同大沢敬作ら闘争委員は、組合員及びその家族ら約三〇名とともに、畠山署長ら川内営林署管理者のほか青森営林局や近隣の営林署から管理体勢の強化を図るため応援に来ていた管理者らが対策本部として利用していた川内町上町所在の北村旅館に押し掛け、同旅館玄関先において、定期作業員の雇用や団体交渉について面談するため畠山署長に面会を求めたが、応対に出た青森営林局係官千葉兵蔵及び久保田庶務課長らに、すわり込みを解いて正常な状態に復さないかぎり、面会はできないとして、右要求を拒絶されたにもかかわらず、約三〇分間にわたり、執拗に畠山署長に対する面会を強要した(原告工藤、同大沢栄一、同大沢敬作ほか組合員らが同日北村旅館に赴き、畠山署長に面会を求めた事実は、当事者間に争いがない。)。

(5) <証拠略>によれば、次の事実が認められる。

営林署本署における前示のようなすわり込みの状況が終日続いたため、同所に勤務する営林署管理者及び本件争議行為に参加しなかつた川内職員組合に所属する二七名の職員の登庁執務が不可能となつたほか、右すわり込みにはほとんどの組合員らが各自の職場を放棄して参加したため、各作業現場、製品事業所、貯木場事務所等川内営林署のすべての職場の機能は完全に停止し、森林鉄道の運行も停止されるに至つた。

(七)  六月二三日の行為

(1) <証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

前示庁舎内にすわり込んでいた組合員らのうち約七〇名の者はその場に泊り込み、翌二三日には、これらの者を加えて組合員及び家族ら約三五〇名の者が前日同様に庁舎内すわり込みを継続したため、同日も営林署の機能停止の状態が続いた。これに対し、畠山署長ら管理者は、同日午前一一時ごろ、右すわり込みの現場に赴き、前日同様業務命令及び退去要求を発出し(同日畠山署長が業務命令等を発出したことは、当事者間に争いがない。)、右命令書等を庁舎玄関脇の壁及び庁舎内に掲示したが、組合員らはいずれもこれを無視した。また、続いて貯木場事務所において、前示のとおりその運行を停止していた森林鉄道の機関車運転手に対し、個別に業務命令を発出したが、機関車運転手らは、いずれもこれを無視した。

(2) <証拠略>によれば、同日午後二時すぎ、組合員ら一二、三名の者が北村旅館に押し掛け、応対に出た千葉係官に対し前日同様の状況で、三〇分ないし四〇分間執拗に畠山署長に対する面会を強要した事実が認められる(同日組合員らが畠山署長に面会を求めた事実は、当事者間に争いがない。)。

(八)  六月二四日の行為

<証拠略>を総合すると次の事実が認められる。

前日から庁舎内にすわり込んだまま同所に泊り込んだ組合員ら約七〇名を含む組合員及び家族ら約三〇〇名の者が、前日同様庁舎内すわり込みを継続したため、同日も営林署の機能停止の状態が続いた。これに対し、同日午後三時半ころ、畠山署長ら管理者に青森営林局事業部長味戸長寿も加わつて、現場に赴き、すわり込み中の組合員らに対し、まず味戸事業部長が、本件すわり込みについて被告局長から青森地本執行委員長にあてて出された警告を、続いて畠山署長が前日同様の業務命令及び退去要求をそれぞれ携帯マイクを使つて発出、伝達したが(同日畠山署長が業務命令等を発出したことは、当事者間に争いがない。)、組合員らはこれらの命令等に従わなかつたのみならず、右命令等の発出に際し、闘争委員らは、組合員らをして労働歌の合唱をさせ、また喚声を上げさせるなどして喧騒を極めさせ、右命令等の伝達を積極的に妨害した。

また、同日午後四時半ころ、田名部警察署長ら警察官が来署し、営林署本署勤務者以外の者が、畠山署長のたび重なる退去要求にもかかわらず同所から退去しないのは不退去罪に該当し、警察職務上放置できないから、これらの者は速かに同所から退去するよう求める警告書を庁舎内に掲示し、さらに、庁舎内においてすわり込みを行つていた者に対し、かかる状態は治安上放置できず、翌朝までに退去しないときは排除する旨の警告を行つた(同日警察官が組合員らに対し警告を行つたことは、当事者間に争いがない。)。そして、畠山署長も、闘争本部にいた原告工藤に対し右同旨の警告を行い、原告神山らその場にいた闘争委員らもこの警告を聞いていたにもかかわらず、同原告らはこれに従おうとはせず、さらにすわり込みが継続された。

(2) <証拠略>を総合すると、次の事実が認められる。

右同日午前一〇時すぎ、原告大沢栄一を中心に組合員及びその家族ら約三〇名が、北村旅館において、応対に出た坂上経営課長及び青森営林局係官武内哲郎に対し、前日同様の状況で、約三〇分間執拗に畠山署長に対する面会を強要した。次いで、午前一一時ころ、同所において、原告工藤を中心に組合員及びその家族ら約三〇名が、応対に出た坂上経営課長及び武内係官に対し、前同様の状況で、執拗に畠山署長に対する面会を強要した。さらに、午後七時半ころ、同所において、原告工藤及び同大沢実らを中心に組合員ら約二〇名が、応対に出た千葉係官に対し、約三〇分間にわたり前同様の状況で執拗に畠山署長に対する面会を強要した(同日原告大沢栄一が組合員及びその家族らとともに、午前一一時ころ原告工藤が組合員及びその家族らとともに、午後七時ころ原告工藤及び同大沢実が組合員らとともに、それぞれ北村旅館において、畠山署長に面会を求めたことは、当事者間に争いがない。)。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(九)  六月二五日の行為

(1) <証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

前日から庁舎内にすわり込んだまま同所に泊り込んだ組合員ら約七〇名は、前示田名部警察署長の警告が発せられたことから、刑事問題化することを回避するため、右同日早朝すわり込みの行われていた庁舎内事務室から、家族幕舎に退去し(同日庁舎内事務室にいた組合員及び家族らが同所から退去し、家族幕舎に移動したことは、当事者間に争いがない。)、同所において、右の者を含む組合員及び家族ら約三〇〇名がさらにすわり込みを続けた。畠山署長ら管理者は、同日午前一一時二〇分ころ現場に赴き、右組合員及び家族らに対し、前日と同旨の業務命令及び退去要求(同日当局から組合員らに対し構外への退去要求があつたことは、当事者間に争いがない。)、加えて天幕舎等の収去要求及び庁舎内事務室内の設備等の原状回復要求を発出したが、組合員らは右命令等をいずれも無視した。そこで当局管理者らは、これら組合員らを自力で排除するもやむなしとの判断から、闘争本部及び家族幕舎に赴いて、すわり込み中の組合員らに対し個別に退去の説得を開始したところ、原告工藤、同神山らは、昼食後自主的に退去するからそれまで猶予してほしい旨要請したので、当局はこれを了承し、すわり込みが行われていたときの状態のままで放置されていた庁舎内事務室の片付け、壁際に積み上げられていた机及び椅子の整とんを行つた。その間原告神山はマイクで、「警官導入は不当である。」、「我々は退去するけれども断固として最後まで闘う。」などとアジ演説し、また労働歌の合唱指導をし、次いで原告工藤が挨拶をした後自ら音頭をとつて組合員らに「川内分会万歳」などと唱和させ(同日原告神山が演説及び労働歌合唱の指導をしたこと、原告工藤が万歳の音頭をとつたことは、当事者間に争いがない。)、その後午後一時ころから、原告神山の指示に従つて組合員及びその家族らが営林署構外へ退去を開始し、午後二時ころ構内天幕舎の撤去とともに退去を完了した。しかし、組合員及びその家族らは、営林署の向いの民有地に新たに天幕舎を設置し、同所においてさらに引き続いてすわり込みを行い、闘争本部も隣接する民有車庫内に移された(同日天幕舎を営林署構内から構外に移し、それに伴つて構内にいた組合員らも構外に移動したことは、当事者間に争いがない。)。

(2) 被告の主張3(九)(4)の事実は、当事者間に争いがない。

(3) <証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

前示のとおり、六月二二日以来庁舎内事務室においてすわり込みを行つていた組合員らが同月二五日同所から退去したことにより、同所における執務が可能となり、同日午後から営林署管理者及び川内職員組合所属の職員らによつて一部の事務が再開されたが、その後も同月三〇日に至るまで、約三〇〇名の組合員及び家族らが、前示営林署前民有地に設置された天幕舎においてすわり込みを行い、組合員らは、畠山署長の連日にわたる職場復帰の業務命令(畠山署長が連日業務命令を発出したことは、当事者間に争いがない。)を無視し、各自の職場を放棄してこれに参加したため、同月三〇日まで営林署の大部分の機能が停止した状態が続いた(なお、森林鉄道の運行は、同月二七日再開された。)。

また、貯木場事務所は、その一隅が組合事務所として川内分会に貸与されていたが、六月二二日以来、事務所内の至るところにビラが貼付され、屋根には組合旗が掲揚されるなど完全に組合員らの占拠するところとなり、その機能が停止していた。同月二五日午後三時ころ、畠山署長ら管理者が同事務所に赴き、その場にいた組合員らに対し、業務命令を発出したが、組合員らはこれを無視し、さらに同月三〇日に至るまで占拠を継続した。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(一〇)  六月二六日以降の行為

(1) 被告らの主張3(一〇)(2)ないし(4)の事実は、当事者間に争いがない。

(2) <証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

六月二七日午前一〇時ころ、貯木場事務所において、同所にいた原告神山、同納谷、同大沢栄一ほか闘争委員らに対し、畠山署長が前同旨の業務命令及び退去要求並びに同事務所屋根に掲揚されていた組合旗及び同事務所中川内分会に貸与されていた部分以外の部分に貼付されていた組合のビラの撤去要求を発出したが、右原告らを含む闘争委員らは、畠山署長ほかこれに同行した管理者らに対し、「ばかやろう」、「いばるな」、「ここは組合で借りているところだから出て行け」などと悪口を浴びせるなどして抗議を行つた。

<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定に反する証拠はない。

(3) 被告の主張3(一〇)(6)ないし(10)の事実は、当事者間に争いがない。

(一一)  本件争議行為の収拾について

<証拠略>を総合すると、次の事実が認められる。

前認定のとおり、本件すわり込み等の争議行為は、全林野中央本部の方針に反して行われたものであるところ、同中央本部では、六月二六日、川内分会等に対し、現在行われているすわり込みを中止し、組合員らはそれぞれ生産点に戻つて正常な職務に従事し、長期的に日給制を求めて行くよう戦術の転換をせよとの指令三九号を発出することを決定し、右指令の内容は、同日中に電話により、高橋副委員長から原告神山に伝達された。しかし、川内分会の強硬な態度から、同指令が守られない事態が危ぶまれたので、高橋副委員長が、同指令文書を持参して現地の説得に当たるため、六月二八日昼ごろ現地に到着した。右高橋を迎えて川内分会では、直ちに闘争委員全員が参加して闘争委員会が開かれ、情勢分析や事態収拾策について意見交換がされたが、右指令三九号に対しては、納得できないとして反対する意見が強く、指令推進の方向に意見がまとまらなかつた。また、これとは別に、川内分会では組合員及びその家族らの代表を東京に派遣し、六月二九日、中央本部に対する抗議等や林野庁に対する事態収拾についての陳情等も行われ、さらに営林署当局との間でも事態収拾をめぐる交渉が行われたが、闘争委員会では、右同日に至り、不満を残しながらも結局前示指令に従うほかはないとの結論に達し、翌三〇日、当局との間で、すわり込みを中止して正常な状態に復すること、その後に団体交渉を再開すること、団体交渉の具体的内容等について協議したうえ、組合員ら全員にこれらの経過を報告し、組合員らを解散させ、六月二二日以来続けられたすわり込みは中止された。そして、七月一日からは、作業員らは上山して各職場に復帰し、勤務を再開した。

3  本件各処分の理由の存否

(一)  原告神山について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(四)のとおり、六月二〇日及びその後本件争議行為の期間中に開催された闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、六月二二日からすわり込みを行うことなど川内分会の闘争方針及び行動内容を討議決定したこと、同(五)のとおり、六月二一日総決起大会終了後川内町内デモ行進を指揮したこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員会書記長として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(六)(2)のとおり、六月二二日畠山署長の命により坂上経営課長が張り出そうとした業務命令書を剥ぎ取るなどし、さらに他の組合員らとともに同課長を取り囲み、罵声を浴びせたこと、同(六)(3)のとおり、同日労働歌の合唱指導をしたこと、同(九)(1)のとおり、六月二五日組合員らが営林署構内天幕舎から退去するに際し、アジ演説をし、労働歌の合唱指導をしたこと、同(九)(2)のとおり、同日組合員らを指揮してデモ行進を行わせたこと、同(一〇)(1)のとおり、六月二六日三回にわたり、組合員らを指揮してデモ行進を行わせ、労働歌の合唱及び合言葉の唱和を行わせたこと、同日庁舎正門前にすわり込んだ組合員らを指揮し、労働歌の合唱を行わせたこと、六月二七日三回にわたり、組合員らを指揮し、前日同様デモ行進等を行わせたこと、同(一〇)(2)のとおり、六月二七日、貯木場事務所において、畠山署長が業務命令等を発出した際、同署長ほか管理者らに対し、悪口を浴びせるなどして抗議したこと、同(一〇)(3)のとおり、六月二八日二回にわたり、組合員らを指揮し、デモ行進、労働歌の合唱等を行わせたこと、六月二九日前日同様組合員らを指揮してデモ行進等を行わせたこと、同日すわり込み中の組合員らに対しアジ演説を行つたこと、六月三〇日前日同様組合員らを指揮し、デモ行進等を行わせたこと、同日原告工藤とともに、組合員らを指揮し、北村旅館前往復デモ行進を行わせたこと。

(2) 前認定の組合員らによつて六月二二日から同月三〇日まで行われたすわり込み等の行為は、公労法第一七条第一項において禁止された行為に該当し、六月二〇日及びその後本件争議行為の期間中に開催された闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに右行為の実行とその具体的行動内容を討議決定したことは、同条項において禁止された行為を共謀する行為に該当するものである。また、争議行為が行われている場合にこれを中止させるため営林署の職員たる組合員らに対して業務命令を発し、庁舎が不法に占拠されている場合に占拠者に対し退去要求等を発することは、営林署長の権限及び職責に属するものであるが、畠山署長の命により業務命令書の掲示を行つた坂上経営課長に対し、暴言を浴びせるなどして右行為を妨害し、貯木場事務所において業務命令等を発した畠山署長ら管理者に対し暴言を浴びせて抗議を行つたことは、右業務命令等の発出の円滑な遂行を妨げるもので、公労法第一七条第一項において禁止された業務の正常な運営を阻害する行為(以下「業務阻害行為」という。)に該当する。前示すわり込みの指導のほか本件争議行為の期間中アジ演説を行つたり、組合員らを指揮してデモ行進、労働歌の合唱、合言葉の唱和を行わせた行為は、いずれも同条項において禁止された行為を実行・継続させる目的で、組合員らに対し、その実行・継続を決意させ又はその決意を強固にするよう働きかけるものであるから、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当する。

(3) 以上のとおり、公労法第一七条第一項に違反する行為を行つたものとして同法第一八条により同原告を解雇した本件処分は、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用に誤りはない。

(二)  原告工藤について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(二)のとおり、六月一三日鈴木ひさに対し事業用電話の取次ぎを行わないように指示したこと、同(四)のとおり、原告神山同様闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(五)のとおり、六月二一日総決起大会終了後川内町内デモ行進を指揮したこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員会副委員長として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(六)(2)のとおり、六月二二日、畠山署長の命により業務命令書を張り出した土岐事業課長を、他の組合員らとともに取り囲んで壁に押しつけ脅迫を加えたこと、同(六)(4)のとおり、同日組合員らとともに執拗に畠山署長に面会を強要したこと、同(八)(2)のとおり、六月二四日午前一一時ころ及び午後七時半ころの二回にわたり、右同様畠山署長に面会を強要したこと、同(九)(1)のとおり、前示の状況下で自ら音頭をとつて、組合員らに「川内分会万歳」などと唱和させたこと、同(一〇)(3)のとおり、六月三〇日原告神山とともに組合員らを指揮して北村旅館前往復デモ行進を行わせたこと。

(2) 闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、闘争方針・行動内容を討議決定するなどした行為が、公労法第一七条第一項において禁止された行為を共謀する行為に該当することは、前示のとおりである。争議行為が行われている場合、かかる違法状態を解消すべく対策を考慮することは、営林署長ほか管理者らの権限に属しかつ職責であるというべきところ、前示のとおり、畠山署長らは、北村旅館を対策本部として、同所においてすわり込みの対策を検討していたものであり、組合員ら多数の者とともに同所に赴いて畠山署長に執拗に面会を強要する行為は、右対策の検討を妨害するものであつて、同条項において禁止されている業務阻害行為といわねばならないし、また、土岐事業課長に対する行為が、業務阻害行為に該当することも、明らかである。事業用電話の取次ぎを行わないことは、業務阻害行為に該当し、右行為を指示したことは、その実行を決意させるよう働きかける行為であるから、同条項において禁止された業務阻害行為をそそのかし、あおる行為に該当する。その余のデモ行進の指揮等の行為が、同条項で禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当することも前示のとおりである。

(3) 以上のとおり、公労法第一七条第一項に違反する行為を行つたものとして同法第一八条により同原告を解雇した本件処分は、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用に誤りはない。

(三)  原告納谷について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(三)のとおり、六月一五日当局が定期作業員に任用を予定していた二二名の者に対する辞令書の交付を妨害し、同日における右の者らの任用を不可能ならしめたこと、同(四)のとおり、原告神山同様、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(一〇)(2)のとおり、原告神山同様、六月二七日貯木場事務所において、管理者らに対し、悪口を浴びせるなどして抗議するなどしたこと。

(2) 闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどした行為が、公労法第一七条第一項において禁止された行為を共謀する行為に該当すること、闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したことが、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当すること、貯木場事務所において、管理者らに対し抗議をしたことが、同条項において禁止された業務阻害行為に該当することは、いずれも前示のとおりである。また、定期作業員に任用予定の者らに対する辞令書の交付を妨害し、任用を不可能ならしめたことが、同条項において禁止された業務阻害行為に該当することも、多言を要しない。

(3) 以上のとおり、公労法第一七条第一項に違反する行為を行つたものとして、同法第一八条により同原告を解雇した本件処分は、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用に誤りはない。

(四)  原告大沢栄一について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(四)のとおり、原告神山同様、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(五)のとおり、六月二一日総決起大会終了後川内町内デモ行進を指揮したこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(六)(4)のとおり、六月二二日組合員らとともに執拗に畠山署長に面会を強要したこと、同(八)(2)のとおり、六月二四日午前一〇時すぎ、右同様畠山署長に面会を強要したこと、同(一〇)(2)のとおり、原告神山同様、六月二七日貯木場事務所において、管理者らに対し悪口を浴びせるなどして抗議したこと。

(2) 闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、闘争方針・行動内容を討議決定するなどした行為が、公労法第一七条第一項において禁止された行為を共謀する行為に該当すること、川内町内デモ行進を指揮したり、闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したことが、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当すること、六月二二日及び二四日畠山署長に執拗に面会を強要したこと並びに六月二七日貯木場事務所において管理者らに対し抗議をしたことが、同条項において禁止された業務阻害行為に該当することは、いずれも前示のとおりである。

(3) 以上のとおり、公労法第一七条第一項に違反する行為を行つたものとして、同法第一八条により同原告を解雇した本件処分は、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用に誤りはない。

(五)  原告大沢実について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、六月二二日から同月三〇日まで行われたすわり込みに際し、自己の職場を放棄してこれに参加したほか、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(一)のとおり、六月一二日工藤事業課長に対し確認書の作成を強要したこと、同(四)のとおり、原告神山同様、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(五)のとおり、六月二一日総決起大会終了後川内町内デモ行進を指揮したこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(八)(2)のとおり、六月二四日午後七時半ころ、組合員らとともに畠山署長に執拗に面会を強要したこと。

(2) 前認定のとおり営林署本署に帰署し、処理すべき職務を有していた工藤事業課長を軟禁してその帰署を妨げ、集団的威圧を加えて同課長に対し確認書の作成を強要したことは、同課長の右職務の執行を妨げ、ひいては営林署の業務の正常な運営を阻害するものであつて、公労法第一七条第一項に違反する行為である。また、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、闘争方針・行動内容を討議決定するなどした行為が、公労法第一七条第一項において禁止された行為を共謀する行為に該当すること、川内町内デモ行進の指揮及び闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したことが、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当すること、六月二四日畠山署長に執拗に面会を強要したことが、同条項において禁止された業務阻害行為に該当することは、いずれも前示のとおりである。

しかして、自己の職場を放棄してすわり込み行為等に参加することは、公労法第一七条第一項において禁止された行為を実行する行為に該当し、かつ、国公法第一〇一条第一項に定める職務専念義務にも違反することが明らかである。また、公労法第一七条第一項違反の行為を行つたことは、国公法第九八条第一項に定める法令遵守義務に違反するものであり、さらに、前認定のとおり、すわり込みがされていた期間中連日のごとく畠山署長が発出した業務命令等の職務上の命令に従わなかつた点で、同条項に定める上司の命令に従う義務にも違反し、これらの行為は、官職の信用を傷つけ、官職全体の不名誉となる行為にも該当するから、同法第九九条に定める信用失墜行為避止義務にも違反するといわねばならない。

よつて、同原告の行為は、国公法の諸規定に違反するものであつて、同法第八二条第一号の懲戒事由に該当し、また、その行為の態様から同条第三号の国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合にも該当する。

(3) 以上のとおり、国公法第八二条の規定に基づき同原告に対し停職二か月の懲戒処分がされたことに関し、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用について誤りはない。

(六)  原告大沢敬作について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、六月二二日から同月三〇日まで行われたすわり込みに際し、自己の職場を放棄してこれに参加したほか、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(一)のとおり、六月一二日工藤事業課長に対し、確認書の作成を強要したこと、同(四)のとおり、原告神山同様、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(六)(1)のとおり、闘争委員として闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したこと、同(六)(4)のとおり、六月二二日組合員らとともに畠山署長に執拗に面会を強要したこと。

(2) 闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、闘争方針・行動内容を討議決定するなどした行為が、公労法第一七条第一項において禁止された行為を共謀する行為に該当すること、闘争本部に常駐し、すわり込み等の行為を指揮したことが、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当すること、六月一二日工藤事業課長に確認書の作成を強要したこと及び六月二二日畠山署長に執拗に面会を強要したことが、同条項において禁止された業務阻害行為に該当することは、いずれも前示のとおりである。

しかして、自己の職場を放棄してすわり込み行為等に参加することは、公労法第一七条第一項において禁止された行為を実行する行為に該当するとともに国公法第一〇一条第一項に定める義務に違反し、また、公労法第一七条第一項違反の行為を行つたこと及び畠山署長が発出した職務上の命令に従わなかつたことは、国公法第九八条第一項及び第九九条所定の各義務にそれぞれ違反するから、同原告の行為は、国公法第八二条第一号に該当し、また、その行為の態様から同条第三号の懲戒事由にも該当する。

(3) 以上のとおり、国公法第八二条の規定に基づき、同原告に対し停職一か月の懲戒処分がされたことに関し、処分該当事実の認定及び処分根拠法令の適用について誤りはない。

(七)  原告板井について

(1) 前示2の事実関係によれば、同原告は、六月二二日から同月三〇日まで行われたすわり込みに際し、自己の職場を放棄してこれに参加したほか、本件争議行為に関し、次の行為を行つたことが認められる。

前示2(一)のとおり、六月一二日工藤事業課長に対し、確認書の作成を強要したこと、同(四)のとおり、原告神山同様、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたこと、同(六)(1)のとおり、六月二二日他の組合員らとともに、すわり込み準備作業の中止等を申し入れた山口経理課長を取り囲んで「ばかやろう」などと罵声を浴びせたこと、闘争委員として闘争本部に常駐し、すわり込み行為等を指揮したこと。

(2) 争議行為として庁舎内におけるすわり込みを実行するため、その準備作業を行つている組合員に対し、営林署管理者たる山口経理課長が、右行為を現認してその中止等を申し入れることは、同課長の権限及び職責であるが、かかる申入れを行つた同課長に対し、集団で威圧を加え、罵声を浴びせるなどして、違法なすわり込み行為の中止等の説得を断念させた行為は、公労法第一七条第一項において禁止された業務阻害行為に該当すると解される。また、工藤事業課長に対する確認書作成の強要が、業務阻害行為に該当すること、闘争委員会に参加し、他の闘争委員らとともに、川内分会の闘争方針・行動内容を討議決定するなどしたことが、同条項において禁止された行為を共謀する行為に該当すること、闘争本部に常駐し、すわり込み行為等を指揮したことが、同条項において禁止された行為をそそのかし、あおる行為に該当することは、いずれも前示のとおりである。

しかして、自己の職場を放棄してすわり込み行為等に参加することは、公労法第一七条第一項において禁止された行為を実行する行為に該当するとともに、国公法第一〇一条第一項に定める義務に違反し、また、公労法第一七条第一項違反の行為を行つたこと及び畠山署長が発出した職務命令に従わなかつたことは、国公法第九八条第一項及び第九九条所定の各義務に違反するから、同原告の行為は、国公法第八二条第一号に該当し、また、その行為の態様から同条第三号の懲戒事由にも該当する。

(3) 以上のとおり、国公法第八二条の規定に基づき、同原告に対し停職一か月の懲戒処分がされたことに関しては、処分該当事実の認定はおおむね正しく(六月二二日の行為につき若干のそごがみられるが、処分の効力に消長を来すものとは認められない。)、処分根拠法令の適用に誤りはない。

4  以下原告らの主張する本件各処分の違法事由について、順次判断を加える。

(一)  原告らは、本件各処分はその理由とされた処分該当事実が存在しないから、違法であると主張するが、各原告につき処分該当事実の存在することは前認定のとおりであるから、右主張は失当である。

(二)  原告らは、公労法第一七条第一項の規定は憲法第二八条に違反するから、原告らの行為が右規定において禁止された行為に該当するとしてされた本件各処分は違法であると主張するが、右規定は憲法第二八条に違反するものでないと解される(最高裁判所昭和五二年五月四日大法廷判決・刑集三一巻三号一八二頁参照。)ので、右主張は失当である。

(三)  原告らは、公労法第一七条第一項の規定により禁止される争議行為には、国有林野事業に従事する者の行う争議行為は含まれないものと解すべきであるか、あるいは同規定を国有林野事業に従事する者に適用することは憲法第二八条に違反すると主張する。

しかしながら、公労法第一七条第一項の規定によれば、国有林野事業に従事する職員及びその組合の争議行為を含む公共企業体等の職員及び組合の一切の争議行為が禁止されていることが明らかであるところ、右争議行為の禁止が憲法第二八条に違反するものではないとされる理由は、公労法の適用を受ける五現業及び三公社の職員は憲法第八三条の財政民主主義に表われている議会制民主主義の原則によりその勤務条件の決定が国会の直接又は間接の判断を受けるという憲法上特殊な地位に置かれていること、五現業及び三公社の労使関係においてはいわゆる市場の抑制力が欠如していることなどの理由により争議権は適正な勤務条件を決定する機能を十分に果すことができずこれら職員は社会的経済的関係においても特殊な地位に置かれていること、これら職員の職務又は業務はいずれも公共性を有すること、争議権を否定する場合の代償措置としてこれら職員は法律による身分保障等を享受しているほか公労法により当局と職員との紛争につきあつせん、調停及び仲裁を行うための公平な公共企業体等労働委員会が設けられており生存権保障のための配慮に欠けるところがないこと、以上の事情を考慮するならば、国会が国民生活全体の共同利益を擁護する見地からこれら職員の争議行為を全面的に禁止することも不当な措置とはいえないということと解せられるから(前掲最高裁判所昭和五二年五月四日判決参照)、公労法第一七条第一項の合憲性に関し、業務の停廃が国民生活に与える影響という観点から、国有林野事業に従事する職員について別異に解し、原告らの主張するような限定解釈やいわゆる適用違憲論を採らねばならないとする根拠はない。よつて、原告らの主張は採用できない。

(四)  原告らは、国有林野事業に従事する定員外職員について公労法第一七条第一項の規定を適用することは、憲法第二八条に違反すると主張する。

しかしながら、右定員外職員といえども公労法の適用を受ける一般職の国家公務員であることに変りはなく、原告ら主張のようにその身分上の規制や給与の予算上の扱い等において定員内職員と異る面があるとしても、そのような差異は、その争議権についての憲法上の解釈に関し定員内職員の場合と異つた解釈を採るべきことを根拠づけるものとはいえない。けだし、公労法第一七条第一項の規定が憲法第二八条に違反するものでないとされる理由は前示のとおりであり、そこで示された理由はすべて右定員外職員に対しても妥当するからである。したがつて、これら定員外職員に対し右規定による争議行為の禁止を及ぼすことが憲法上許されないと解すべきではなく、原告らの主張は採用できない。

(五)  原告らは、公労法第一七条第一項の規定は、公共企業体等の職員及び組合の争議行為のうち、国民生活全体の利益を害し、国民生活に重大な支障をもたらす虞のあるもののみを禁止しているにすぎないものと解すべきところ、本件争議行為は、右禁止された争議行為には該当しないから、本件争議行為が右規定に違反することを理由としてされた本件各処分は違法であると主張するが、右規定が一切の争議行為を禁止していることはその文理上明白であり(なお、かかる争議行為禁止規定が憲法第二八条に違反するものでないことは、前述のとおりである。)、原告らの主張するような解釈は採ることができないので、原告らの主張はその前提において失当である。

(六)  原告らは、本件各処分のうち、原告神山、同工藤、同納谷及び同大沢栄一に対し、公労法第一八条の規定を適用してした処分は、同規定の解釈適用を誤つたもので違法であると主張する。

しかしながら、公労法第一八条の趣旨は、同法第一七条第一項違反の争議行為をした職員について、法の定める身分保障に関する規定にかかわらず、解雇できるとするにあり、解雇するかどうかその他どのような措置をとるかについては、処分権者の合理的な裁量に委ねる趣旨と解され、原告らの主張するように、争議行為の違法性が強く、かつその行為が争議行為に通常随伴する枠を超えている場合でなければ右規定による解雇が許されないと解すべきではない。したがつて、原告らの主張はその前提において失当である。

なお、仮に原告らの主張が、原告神山ら四名に対してされた公労法第一八条の規定による解雇が、その行為に比して重きにすぎ、裁量権の濫用に該当するとの趣旨を含むものとしても、同規定による解雇を行うか否かは、処分権者において、当該行為の態様・程度のほか、当該行為者の行為の前後における態度等諸般の事情を総合考慮して決せられるべきものであり、公労法第一七条第一項違反の行為が認められる以上、その行為者に対してされた解雇は、それが社会観念上著しく妥当を欠くと認められないかぎり、裁量権の濫用として違法とはならないものと解すべきところ、本件においては、前認定のとおり六月二二日から二五日までの間、多数の組合員らが営林署本署事務室内にすわり込み、署長らの管理を完全に排除してこれを占拠するという行為に及んでおり、なおその後も組合員らは各自の職場を放棄してすわり込みを継続し、同月三〇日に至るまで九日間にもわたつて営林署のほとんどすべての機能を停止させるなど争議行為の規模・態様は極めて大きく、激しいものというべきであり、右原告らは、闘争委員会において、書記長、副委員長又は闘争委員として、右行為を共謀し、またその実行に当たつては、組合員らを指揮するなど重要な役割を果したほか、営林署長から業務命令等が発出された際など、管理者らに対ししばしば粗暴な行為に及んでいる点も無視できず、その情状は極めて悪質といわねばならず、さらに、<証拠略>によれば六月一二日付処分において、原告神山は停職二か月に、原告工藤、同納谷及び同大沢栄一は停職一か月にそれぞれ処せられている(同大沢栄一は五月一四日付処分においても停職三日に処せられている。)ことが認められ、この処分歴をも考慮すれば、右原告らに対し、公労法第一八条による解雇がされたのは、やむをえないところというべきであり、これが裁量権の濫用に該当するとはいえない。

(七)  原告らは、国有林野事業の労使関係には、労働組合法及び公労法のみが適用されるべきであり、国公法の適用は排除されるものと解すべきであるから、本件各処分のうち、国公法第八二条を適用して、原告大沢実、同大沢敬作及び同板井に対してした処分は、違法であると主張する。

しかしながら、国有林野事業に従事する職員は、一般職の国家公務員であり、これらの者に対し、一般的に国公法の適用が排除されると解すべき根拠はなく、また公労法第四〇条第一項第一号は、いわゆる五現業の職員に対する国公法の特定の規定の適用を排除しているが、同規定によつても、国公法第八二条の規定の適用は排除されていないので、原告らの主張は失当である。

(八)  原告らは、公労法第一七条第一項違反の争議行為に対しては、国公法第八二条第一号及び第二号の規定は適用されるべきではないことなど国公法第八二条各号の懲戒規定の解釈適用の誤りを主張する。

しかしながら、争議行為が集団的組織的行動であることは原告ら主張のとおりであるとしても、その集団性のゆえに争議行為参加者個人の行為としての面が当然失われるものではなく、公労法第一七条第一項違反の争議行為に参加し、服務上の規律に違反した者が、その責任を問われ、懲戒処分の対象とされることを免れないのは当然のことであり(最高裁判所昭和五三年七月一八日第三小法廷判決・民集三二巻五号一〇三〇頁参照)、国有林野事業に従事する職員が公労法第一七条第一項違反の争議行為を行つた場合には、国公法第九八条第一項、同法第九九条、同法第一〇一条第一項の規定に違反することとなるから、結局同法第八二条第一号に該当することとなり、さらに、行為の態様によつては、同条第三号にも該当する場合があるというべきこと前説示のとおりであるから、原告らの主張は採用することができない。

(九)  原告らは、本件各処分は、原告らが共産党員又はその同調者であることを理由としてされたものであるから、違法であると主張するが、仮に原告らが共産党員又はその同調者であるとしても、本件各処分がそのことを理由としてされたものであることを認めるに足る証拠はないから、原告らの主張は失当である。

(一〇)  原告らは、本件争議行為は、当局の作業所閉鎖に対する抗議行動として行つたものであり、また、当局の正当な理由に基づかない団体交渉の拒否に対して抗議し、団体交渉再開を求めたものであつて、労働組合法第七条第一号本文の正当な労働組合活動というべきところ、本件各処分は、右正当な労働組合活動に対してされたものであるから違法であると主張する。

しかしながら、公労法第一七条第一項違反の争議行為のうちに、労働組合法第七条第一号本文の「正当な行為」にあたるものとそうでないものとがあるとし、右「正当な行為」にあたる争議行為については、公労法第一八条の規定による解雇ないしは国公法上の懲戒処分ができないというような解釈は採ることができず(前掲最高裁判所昭和五三年七月一八日判決参照)、公労法第一七条第一項違反の争議行為について、労働組合法第七条第一号本文の「正当な行為」に該当するか否かを問題にする余地はない。よつて、原告らの主張はその前提において失当である。

(一一)  原告らは、本件各処分は、本件争議行為の指令発出責任者たる中央本部弓削委員長及び熊井書記長の責任を不問に付し、組合の分裂をはかるためにされたもので支配介入行為に該当すると主張し、<証拠略>中には右主張に沿う部分があるが、これは原告神山の憶測に基づく供述にすぎず、措信するに足りないし、他に本件各処分が組合の分裂をはかる意思をもつてされたことを認めるに足る証拠はない。

のみならず、<証拠略>によれば、本件各処分を行うにあたつて、当局は、従来の処分例に鑑み、全林野中央本部の責任についても検討を加えたが、本件争議行為が中央指令に基づくものとは確認できず、しかも右行為は、中央本部において、日給制闘争の中央拠点における行動として予定していた範囲をはるかに超える激烈なものであつたことから、本件においては、各人が実際に参画した行為の軽重に従つて処分内容を決定するとの方針により、中央本部弓削委員長及び熊井書記長に対する処分は行わないことに決せられたことが認められ、本件各処分を行うにあたつて採られた右のような方針は、合理的な裁量権行使の方法として首肯しうるものであつて、違法な点は認められない。

よつて、原告らの主張は失当である。

(一二)  処分権濫用の主張について

(1) 原告らは、右弓削及び熊井に対して処分を行わず、原告らに対して処分をしたことは著しく不均衡な処分というべきであり、本件各処分は処分権を濫用してされたものであると主張する。

しかしながら、一定の処分基準に従つて多数の者に対する処分が行われる場合において、何ら合理的な理由なく特定の者に対して右基準より不利益な内容の処分がされたときは、当該処分は不公平な処分であり、処分権の濫用として違法としなければならない場合があるが、本件においてはそのような事情は認められず、前記弓削及び熊井に対して処分が行われないで、原告らに対して処分が行われたことが不合理といえないことは、前示のとおりであり、原告らの主張は失当である。

(2) 原告らは、本件争議行為に至つた責任は当局側にあるから、本件各処分は不公正であつて処分権の濫用であると主張する。

しかしながら、公労法第二六条以下の規定によれば、公共企業体等とその職員との間に発生した紛争に関しては、公共企業体等労働委員会によるあつせん、調停及び仲裁の手続が定められており、また、公共企業体等の正当な理由のない団体交渉の拒否に対しては、労働組合法第七条第三号、公労法第三条、第二五条の五の規定に基づき、不当労働行為として右委員会に救済の申立てをする途が開かれているのであるから、本件争議行為が行われる至つた経緯において、当局側に何らかの責められるべき点があつたと仮定しても、そのことにより直ちに違法な本件争議行為に対し、公労法第一八条による解雇又は国公法上の懲戒処分が行えないとか、そのような場合に行われた処分が不公正なものとして違法になると解することはできない。

しかも<証拠略>によれば、本件争議行為を開始するに際し、川内分会においては、前記公労法所定のあつせん等の手続を利用するなどして違法争議行為を回避する努力は全くされておらず、むしろ右手続の利用は原告ら指導者の念頭になかつたことが認められ、他方本件争議行為の規模・態様は、前述のとおり極めて長期間かつ激烈なものであり、右行為について指導的役割を果した原告らの責任は重大というべきところ、これらの点を合わせ考慮するならば、本件争議行為に至る経緯を論ずるまでもなく、原告らに対し本件各処分がされたのはやむをえないところであつて、本件各処分が著しく不合理で、処分権を濫用してされたものということはできない。

(3) 原告らは、本件各処分は、(ア)本件争議行為につき中央指令・指示が存在しなかつたこと、(イ)川内分会が出来高払いの賃金支払形態を実力で定額日給制にしたこと、(ウ)当局が一方的に労働条件(賃金支払形態)を変更したことに同意しない作業員にも就労義務が存すること、以上の事実認識のもとに行われたが、いずれも重大な前提事実を誤認したものであつて違法であると主張する。

しかしながら、(ア)については、事実誤認に該当しないことは前示のところから明らかであるし、(イ)については、本件争議行為に至る原因ないし経緯に関する事実の誤認をいうものと解せられるが、このことが、本件各処分の内容を決定するに当つて重要な事情として考慮されたものと認めるべき証拠はなく、かえつて、本件争議行為に至る経緯のいかんを問わず、本件各処分が不合理とはいえないことは前示のとおりであるから、右事実認識の当否は、本件各処分についての裁量権の濫用には結びつかないものというべきであるし、(ウ)の点については、当局による一方的勤務条件の変更が許されるか否かの点はしばらく措くとしても、賃金支払形態について作業員が同意しないからといつてその任用関係が終了するわけではないから、作業員として任用されている以上、依然として就労しなければならない義務を負つていたことは明らかであり、この点の認定に誤りはない。

したがつて、原告らの主張は失当である。

(4) 原告らは、本件各処分の前後に行われた争議行為については、現場指導者に対し本件のような苛酷な処分が行われた例はなく、本件各処分は処分権の濫用であると主張する。

しかしながら、仮に原告ら主張のような処分状況があつたとしても、公労法第一八条の規定による解雇又は国公法上の懲戒処分は、その処分を行うか否か、どの処分を選択するか等につき、処分権者において、極めて広範かつ多様な事情を総合考慮したうえ決せられるべきものであつて、他に本件各処分より重い処分が行われた例がないということのみでは、処分権の濫用の根拠とはならない。よつて、原告らの主張は失当である。

(一三)  以上判示したとおり、本件各処分の違法をいう原告らの主張は、すべて失当であり、本件各処分はいずれも正当といわねばならない。

三  よつて、原告らの本訴各請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 桜井文夫 福井厚士 山崎敏充)

別紙目録 <略>

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